企業の安全性を見るうえで欠かせない自己資本比率。
一般的に優良銘柄、安定していると言われる企業は、
自己資本比率が高いことが多いです。
事業をするにあたってその多くを
自分の元手で賄えているという事なので
高い自己資本比率の会社の株=優良銘柄
というのはその通りでとは思うのですが、
自己資本比率が高い銘柄にも
実はデメリットがありますので、
当記事で解説したいと思います。
それでは、始めていきます。
目次
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自己資本比率をサラっとおさらい
自己資本とは、銀行など金融機関への返済が発生しない、
自社が持つお金のことです。
まさに「自分の資本」ということですね。
※借入金など返済をしないといけないお金は「他人資本」と言います。
なので、
自己資本比率とは、返済が不要な自己資本が
資本全体の何%あるか?を示す数値のことです。
計算式は、以下のようになります。
自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資本(自己資本+他人資本)
※ダイアモンドZai(https://diamond.jp/)から引用
自己資本比率はどの程度あれば良い?
上記の通り、自己資本比率が低い企業ほど、
他人資本の影響を受けやすいです。
それはすなわち不安定な経営を
行っていることになり、会社の独立性に不安が生じます。
最悪、倒産ということになりかねません。
では、逆に自己資本比率の高低は
どの程度あれば良いのでしょうか?
0%以下の場合
一般的に、0%というのは、
倒産する可能性が高いと言われる数字です。
資金のほぼ全てを金融機関などからの
借入金に頼っている状態です。
稼いだ傍から返済⇒手元資金ゼロの自転車操業。
一般の家庭で言えば、複数借り入れの預貯金無しで、
収入が止まるとアウトという事です。
これはイメージしやすいと思います。
40%以上は安全ライン?
色々な文献や一般論に照らし合わせるに、
自己資本比率=40%以上なら倒産する可能性は低いと言われます。
業種にもよるのと負債の中身も見ないといけませんが、
・すぐに返済しないといけない借金が少ない
・売上が止まってもある程度持ちこたえる現金がある
場合が多いです。
さらに、自己資本比率=60%以上であれば、
他人資本が40%ということですから、
たとえ全額を返済する事態になっても
手元にお金が残りやすいです。
なので、
・一般的なライン=40%以上
・安全ライン=60%以上
と考えて良いと思います。
私の経験と照らし合わせても
この数時感で一致します。
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自己資本比率が高いデメリット
ここまでの流れだと、
自己資本比率は高ければ高いほど良さそうに見えますが、
そこには意外な落とし穴があります…
自己資本比率のデメリットについて紹介していきます。
【デメリットその1】
自己資本比率が高い=成長速度が遅い
たとえば、あなたが
自己資本比率100%の会社の経営者だとしましょう。
100%ということは無借金経営ですので、
たしかに倒産のリスクはほぼありません。
しかし、自分の手元資金だけで事業を行うということは、
企業の成長速度も遅くなるリスクがあります。
たとえば、あなたの会社が
自己資本が20億円(100%自分資本)で、
毎年5%の利益を出している企業があるとします。
毎年の利益は、20億円×5%=1億円です。
利益率が安定しているのは良いですが、
一方で、自己資本の20億円を大きく増やすのは難しいです。
毎年1億円の利益なら、単純計算で
自己資本20億を倍の40億円にするのに、
20年(利益1億×20年)かかります。
なので、これ以上利益額を増やそうとすれば、
なかなか厳しいと見込まれます。
ここで、この企業が金融機関から借り入れをするとどうなるか?
自己資本の20億円にプラスして、
銀行から10億円を借り入れることにより、
総資本は、自己20億+他人10億=30億円となります。
利益率がおなじ5%の水準をキープできれば、
利益は1億5000万円と、1.5倍になります。
もちろん借金には利息が発生はするものの、
年利2%で借りることができていれば、
それでも1億3000万円の利益が出ます。
資本主義の原則は、
マーケットが伸びているうちに
出来るだけ早く競合からシェアを奪うこと。
すなわち、スピードが重要という事です。
多少、借り入れのリスクを負い
利息を支払ってでも、今以上に成長する可能性があるのであれば、
借金も悪くないということです。
逆に、大して成長もせず
自己資本比率の高い企業であれば、
安定はしているかもしれませんが、
その企業(業界)自体に成長性が見られない
という側面が見えてきます。
なので、自己資本比率の高さだけでなく
・自己資本比率が高い理由は何か?
・業界の市場規模と推移
といった要素も合わせて見ていきましょう。
【デメリットその2】
倒産する可能性も実はある
自己資本比率が60%以上と高い会社でも、
不測の事態で倒産する可能性はあります。
・地震、火山といった災害
・コロナウイルスなどの感染症、
・戦争、政情不安
・自社、取引先の不祥事
など、ビジネスに絶対の安泰がないことは
意識しておいた方が良いでしょう。
また、自己資本比率が高いという事は、
コロナウイルスで売上が止まるなど、
緊急時の融資にゼロから銀行と取引する必要が出てきます。
それには当然時間を要しますので、
審査が長期化する間に資金繰りが悪化することもあるでしょう。
借り入れに大きく頼ることはしなくても、
何かあった時に借りられるよう、
金融機関との付き合いある程度は必要です。
業界によっても違う
高自己資本比率の方が安全性も高いですが、
高低の背景を考えることも重要です。
実際、この自己資本比率は
業界や事業フェーズによっても異なります。
構造的に自己資本比率が高くならざるを得ない
業界もありますので、そこは把握しておきましょう。
自己資本比率が高い業界・セクター
※2020年時点の傾向です
✅情報通信
✅医薬品
✅精密機器
特に、情報通信系のセクターに分類される銘柄は
自己資本比率が高い銘柄が多く、
私のポートフォリオの主役である
NTTを筆頭に収益面でも優良銘柄が多いです。
自己資本比率が低い業界・セクター
✅銀行
✅証券
✅リース
✅電気・ガス
✅海運
逆に上記の業界・セクターが
自己資本比率の低い傾向にあり、
10%、20%といった企業もあります。
ただ、構造的に仕方ない部分もあります。
たとえば、金融業界であれば
・顧客からカネを集めて運用する
・その運用収益、手数料で稼ぐ
・モノやカネを貸す
といったモデルであるという背景があります。
また、電力会社は高額な発電設備が必要ですし、
海運も巨大なタンカー船などを現金一括で
買うのは至難の業です。
※メンテナンス費もバカになりません。
なので、繰り返しになってしまいますが、
個別銘柄の自己資本比率だけでなく、
同業種・競合他社もチェックするようにしましょう。
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まとめ
そうはいっても、何でもかんでも借金に
頼ればいい訳でははありません。
巨額の借り入れは、同時に
巨額の利息と返済義務を発生させます。
売上が落ちることがあれば、
途端に経営を圧迫するでしょう。
自己資本比率の高低には、
それぞれメリット・デメリットが潜みます。
なので、0%だろうが100%だろうが、
※ちょっと極端なたとえですが
あくまでも目安の数字と考えてもらえればと思います。
その上で、行動プランです。
<自己資本比率のチェック方法>
① 高低を確認する
② 競合他社と比較してどうなのか見る
③ 自己資本比率が高ければ、業界の成長性を考える
④ 逆に低ければ、それが構造的なものか?
成長のための前向きな借金か?
どちらかと言うと苦しい借金か?調べる
自己資本比率の低い企業に投資をするなら、
企業の成長度合いも確かめる必要があります。
実際、多くの有名企業が、かつて
ほぼ借り入れという状態から
上手にレバレッジをかけて急成長を遂げてきました。
最初から手元資金に余裕があれば理想ですが、
そうも簡単に行かないのが経営の現実です。
IPOしたてのベンチャーに
自己資本比率が低い企業が多いのも
それを現わしているでしょう
業界の特徴、将来性などもあわせて考えてみるのをお勧めします。
それでは、最後までお読みいただき
ありがとうございました!